喘息の原因と考えられるダニアレルゲンを減らすための環境づくり
気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の原因となる吸入アレルゲンとしては昆虫・動物アレルゲンや、真菌（カビ）アレルゲン、花粉アレルゲンなどがあります。
特にアトピー型の喘息ではダニアレルゲンが重要です。日々の暮らしの中でアレルゲンを除去することはアレルギー疾患の改善にもつながります。今回は特に喘息の原因と考えられるダニアレルゲンを減らすための効率の良い環境づくりについてお話します。
アレルゲンを減らすための具体的方法とは
ダニアレルゲンは生活環境アレルゲンであるため日常生活からの完全除去は難しいと考えられています。
しかし、こどもの喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の原因の多くはダニアレルゲンと考えられていますのでダニアレルゲンを減らすことはとても重要な対策となります。
ダニアレルゲンを減らすための方法はさまざまな形で寝室・寝具を掃除することが一般的に知られていますが、実際にアトピー性皮膚炎の子どもたちを対象とした研究では、防ダニシーツを使用し、以下にも気をつける事が効果的です。
① 寝室内にある全員のふとん・ベッドカバーを週1回は洗う
② 寝室全員のふとん・ベッドの表面に週1回は掃除機掛けをする
③ 掃除機掛けの前に床（フローリング、畳）に水拭きをする
④ 寝室を含めたすべての部屋に週1回は掃除機掛けをする
⑤ カーペットは取り除くか、できなければ週1回以上掃除機掛けをする
⑥ ぬいぐるみを置かない、布製の家具は置かない
⑦ ペットを室内に入れない
の7項目の環境整備指導１）を行うと、寝具のダニアレルゲンが減少し、血液中のダニアレルゲンの抗体が低下したと報告されています。
ダニアレルゲンを減らすことが子どものアレルギーを改善することを示しています。
成人喘息患者さんを対象とした、寝室の環境整備指導について
こども以上に大人のアレルギーでは複雑で、さまざまなアレルギー症状はダニアレルゲンがすべての原因ではないこともありますのでアレルゲンを減らす以外の対策をふまえて対応することが必要です。ダニアレルゲンを減らす方法はさまざまな方法が知られていますが、どのやり方が一番、効率がよいのかについてはわかっていません。
私たちは日常診療でアトピー型の成人喘息の患者さんを対象として寝具のダニアレルゲンを減らすための環境整備指導を行っています。ダニを減らすためのさまざまな掃除の仕方を集約して32項目の環境整備チェックリスト（表１）２を作りました。
いずれの項目もダニアレルゲンを減らすために重要ですが、項目数が多く毎週すべての項目を励行するのは決して容易なことではありません。そこで私たちは外来通院中の成人喘息の患者さんを対象として、寝具のダニアレルゲン量を定量し前述の環境整備チェックリストを使用して環境整備指導を行い、その1年後の同時期に寝具のダニアレルゲン量を測定し、環境整備チェックリストの項目別にダニアレルゲン量の減少と関連のある項目を解析しました。
その結果、
・週に1回以上、寝具に直接掃除機をかけている。（no.15）
・天日干しした後、寝具に掃除機をかけている。（no.22-1）
・掃除機をかける前に床の拭き掃除をしている。（no.26）
の3項目を励行した患者さんの寝具のダニアレルゲンが、特に減少したことを確認しています２。
環境整備チェックリストはいずれも大事な掃除方法が挙げられていますが、どうしても時間が取れないときや掃除をすることが大変なときには最低限この項目を励行するとよいかもしれません。
参考文献 １・Nishioka K, Yasueda H, Saito H: Preventive effect of bedding encasement with microfine fibers on mite sensitization. J Allergy Clin Immunol 1998;101:28–32
２・Tsurikisawa N, Saito A, Oshikata C, Yasueda H, Akiyama K. Effective allergen avoidance for reducing exposure to house dust mite allergens and improving disease management in adult atopic asthmatics. J. Asthma 2016;8:843-853
ドクター
医学博士 釣木澤 尚実
国立病院機構埼玉病院 呼吸器内科
-長崎大学医学部卒業
-横浜市立大学医学部大学院卒業
専門：アレルギー・呼吸器病学
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