【ダニ博士・五箇公一先生コラム】 ダニはどんなところに住んでいて、なにを食べているのか?

【ダニ博士・五箇公一先生コラム】 ダニはどんなところに住んでいて、なにを食べているのか?

一般的には嫌われ者の「ダニ」。しかし、実は彼らはとても重要な生物群なのです。10万〜100万種はいるかもしれないとされるダニたちは、その生活様式も様々で、それぞれが生態系の中で、重要な役割を果たしています。つまり、彼らも立派な生物多様性の一員なのです。今回は、いろいろなところに生息するダニの生き様や生態的機能について紹介します。

人の顔に住むダニ

人の顔の表面にもダニが住んでいるというのは、結構有名な話で、聞き覚えのある方も多いと思います。顔の毛穴にニキビダニというダニが住んでいて、皮脂を食べて生きています。日本人の大半はこのダニを顔に持っています。生まれたばかりの赤ちゃんには当然ニキビダニは寄生していませんが、お母さんが「可愛い!!」と頬ずりしたときに、お母さんのダニが子供に移ると考えられます。だから、皆さんの顔には、家系ごとに代々伝わるダニが生息している可能性が高いのです。

顔にダニが住んでるなんて、許せない!といって、異常なまでに洗顔料に拘って、ダニを顔からゼロにしようとする人もたまにいますが、もともとみんなが持っているダニであり、恐らく人類の進化とともに、共生関係を築いてきたダニであり、それを無理に落とすことはかえって、顔の上の生態系を乱して、弊害が生じるかもしれません。

確かに、顔ダニは体調が悪いと発生量が増えて、ニキビの原因になるともいわれていますが、逆に考えれば「健康のバロメータ」として、規則正しい生活と適度な先願で、彼らを増やさないように生活することが大事なのではないでしょうか。

土に住むダニ

土壌の中にはたくさんのダニが住んでいます。ササラダニといわれるダニたちは、姿かたちも様々、体色も色とりどりで、並べて見るとまるで宝石箱を開けたかのようです。彼らは、主に森林の土壌に住み、枯れ葉や植物の破片などを食べて粉砕することで、より小さな動物やミミズ、菌類等が栄養源として利用し易いかたちにする役割を果たします。いわば、森の分解者です。

その他、ケダニやタカラダニは小さな昆虫や昆虫の卵を食べるという、捕食者の役割を担っています。当然、これらのダニ自身もまた大型の昆虫類の餌となります。

植物に住むダニ

植物の葉の上にはハダニという植物寄生ダニが生息します。彼らは植物の汁を吸うベジタリアンで、そんな彼らを食べる肉食性のダニ=カブリダニも植物の上で生活をしています。そしてハダニもカブリダニもアリ等の昆虫類の餌となります。こうして植物の上でも食う食われるの連鎖が形成され、生態系が展開されています。

ちなみに、農業現場では、ハダニが大発生することで作物の収穫量にも悪影響が及ぶことがあり、ハダニは有害な害虫とされます。しかし、ハダニが大発生する訳は、単一の作物が集中的に植えられている畑という非自然環境に、農薬が散布されることで天敵となるカブリダニや昆虫類が発生できない、という条件が揃うためであり、自然界で異常な大発生をすることは滅多にありません。

昆虫に住むダニ

昆虫の身体の外や中にもダニが住んでいます。例えばクワガタムシの体表にはクワガタナカセというダニが住んでいます。クワガタムシを飼育したことがあるひとなら、誰でも一度は見たことがある、クワガタの背中をチョロチョロ歩き回っているうすピンク色の小さな「ムシ」の正体がこのダニです。ダニにたかられてクワガタムシが可哀想、という意味で、この名前がつきました。しかし、実際にはこのダニは、クワガタの体表のゴミやカビを舐めて食べている「掃除屋さん」で、クワガタムシと共生関係にあります。

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図.クワガタナカセのコンピュータ・グラフィック(筆者作) 天皇陛下と美智子様にこのダニの絵を献上したことが筆者生涯最大の自慢である

ちなみに筆者は、色々なクワガタムシとそれに寄生するクワガタナカセのDNAを分析して、彼らの共生関係の歴史を調べたことがありますが、クワガタムシの種ごとに独自のダニ系統が1000万年以上の長い年月をかけて進化していることが分かりました。

その他、遠くへ飛び回ることができるハチやトンボやバッタ等の体表にはトゲダニやイトダニなどが生息しています。彼らは、これらの昆虫に便乗してタクシー代わりに使っています。

変わり者としては、蛾の耳に寄生するダニがいます。彼らは蛾が飛べなくなることのないよう、必ず片側の耳にだけ集まって生活するよう進化しています。

動物に住むダニ

動物の身体にはマダニという吸血ダニが住んでいます。動物の血を吸い、時には人間にも寄生する困ったダニの代表格ですが、彼らもまた、生物界で動物の小さな天敵として、長期的な動物個体群の調整役を担っていると考えられます。

鳥の羽毛には、ウモウダニが寄生しており、彼らは鳥の羽のゴミを食べて、鳥の羽繕いの手助けをしています。ちなみに日本のトキには、固有のウモウダニ「トキウモウダニ」が寄生していました。しかし、トキの絶滅とともに、このダニも地球上から姿を消しました。現在、環境省の手によって国内での増殖と放鳥が試みられている中国産トキには、この日本固有のトキウモウダニとは異なるダニが寄生しているそうです。

水に住むダニ

ダニは水中にも生息しています。淡水中には、ミズダニという肉食性のダニがミジンコやユスリカの幼虫などを餌として生息しています。トンボの幼体であるヤゴに寄生するものもいて、彼らは、トンボが成虫になったときにその身体に乗っかって、空中旅行をして新天地を目指します。

海水中にはウシオダニというとても小さなダニが生息しています。海藻や海綿のうえで生息しており、付着有機物や腐食物を餌としていると考えられます。海の中にもダニがいる、ということで、ダニは海から陸に上がって進化したと思われるかも知れませんが、その逆で、陸で進化したダニの一部が海に進出したと思われます。なので、ウシオダニの身体には陸上の呼吸器官である「気門」の名残があります。

ダニの多様性の意味

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図.ダニの多様な生息域

このようにダニは、様々な環境に適応して、様々な種に分化して、地球上の至る所に生息しています。これだけ広範囲に多様な種が生息することで、彼らは自然生態系の中で、物質と生き物の間をつなぐ、あるいは生き物と生き物の間をつなぐ役割を果たし、生態系を支えているのです。

家庭内で発生して、アレルゲンとして嫌われものになっているコナヒョウヒダニおよびヤケヒョウヒダニという塵ダニ類も、もともとは自然の中で、有機物を食べて分解するという役割を果たしていたと考えられます。それが人間の住む家という、非自然環境のなかで、大発生してしまい、健康問題を引き起こしていると考えられます。

そう考えれば、実は、ダニが悪者になってしまうのはあくまでも人間が作り出す特殊な環境の中だけであって、ダニという生物は、この地球上の生態系にとってなくてはならない存在であるといえるのです。 

国立研究開発法人 国立環境研究所
生物・生態系環境研究センター
生態リスク評価・対策研究室 室長
五箇 公一 先生

1990年,京都大学大学院昆虫学専攻修士課程修了,1990年,宇部興産株式会社農薬研究部入社。1996年,京都大学博士号(論文博士)取得(農学)。1996年,国立環境研究所入所。 2016年から現職,現在に至る。
専門は保全生態学・環境毒性学・農薬科学・ダニ学。環境省・外来生物法の策定や農林水産省・農薬取締法の改正など、環境リスクにかかる国の法律・制度に専門家委員としてかかわる。
主な著書にクワガタムシが語る生物多 様性(集英社,2010),昆虫科学読本. 日本昆虫科学連合・編(共立出版,2015), 感染症の生態学. 日本生態学会・編(共立出版,2016)など。
テレビや新聞等マスコミを通じて,生物多様性・生態リスクの啓蒙にもつとめる。

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