【ドクターズコラム】いよいよ本番を迎える花粉症。病院と市販の点鼻薬の違いとは

【ドクターズコラム】いよいよ本番を迎える花粉症。病院と市販の点鼻薬の違いとは

2-3月にかけて日本の多くの地域でスギ花粉が飛び始める季節です。日本人の花粉症有病率は25%を超え、現役世代では30%を超えており、鼻水、鼻づまり、くしゃみなど花粉症のつらい鼻症状で困っている多くの方が、病院や薬局を訪れます。花粉症の治療には、飲み薬や点鼻薬などがよく使われています。その最近の薬の特徴と使い方について紹介します。

最近のお薬はこんな感じ

日本で花粉症の治療として最も親しまれているのは飲み薬による治療です。欧米では点鼻薬が一般的ですが、日本人は飲み薬を好む傾向があるといわれています。今まで様々な種類の薬が発売され、選択肢が大変多く、いくつかの種類を組み合わせて治療することもあります。中でも、アレルギーを起こすヒスタミンという化学物質の作用をブロックする抗ヒスタミン剤は、現在でも新薬発売が続いています。また最近では、病院に行かなくても近くの調剤薬局やドラッグストアで、処方箋なしに買うこともできるようになりました。

抗ヒスタミン剤は歴史があり、第一世代、第二世代と大きく二つに分かれています。第一世代は、効くのですが眠くなりやすい特徴があり、やや敬遠され気味でした。一方、第二世代の薬は効果を維持したまま眠くなりにくい工夫がされた薬で、現在多くの方が利用しています。

薬を飲むタイミングとしては、花粉が飛ぶ前から早めに内服継続した方が良いという考えや、症状が出てから開始すれば良いという考えもあります。最近発売されている薬は速効性があり、短時間で十分効果が発揮されるものが多いので、ほんの少し症状が出たタイミングで開始する飲み方でも十分効果が得られるでしょう。

よく聞く「ステロイド点鼻薬」ってどうなの?

また、治療ガイドラインを過去にさかのぼってみてみると、ステロイド点鼻薬の治療に占める割合が、拡大してきています。ステロイドは得られる効果が大変大きく、アレルギー症状を抑える切り札的存在です。以前、ステロイドの副作用が注目されたことで、ステロイド剤を敬遠される方もいるようですが、副作用が問題となったのは、長期間内服した場合やステロイドの注射治療の場合です。

花粉症で使われるステロイド点鼻薬は、鼻に噴霧しても局所でのみ効果を発揮し、体に吸収される割合も1%未満で、吸収されてもすぐに分解されるため、1年間継続投与しても副作用が出にくいといわれています。ステロイド点鼻薬は鼻粘膜への十分な効果が期待でき、内服薬と違って全身に薬が回る心配はほぼない薬剤です。欧米の治療傾向にあわせて、ステロイド点鼻薬が使われる頻度が高くなっていくことが予想されます。

「病院でもらう点鼻薬」と「市販の点鼻薬」その違いや、注意点は?

点鼻薬は大きく「ステロイド点鼻薬」と「血管収縮点鼻薬」の二つに分けられます。
この二つの点鼻薬は役割が全く異なります。ステロイド点鼻薬は、病院で処方してもらう必要がありますが、飲み薬と同様に定期的に使うことで鼻粘膜でのアレルギー反応を抑えて症状を力強く抑制します。

一方、血管収縮薬は市販薬でドラッグストアでも手に入りますが、アレルギー反応は抑えません。鼻粘膜の血管を収縮させて粘膜の腫れを抑え、鼻づまりを抑えます。20分程度ですぐに効果を実感できますが、2,3時間で効果が切れてきます。1日を通して症状を抑えるには頻繁につける必要がありますが、重大な副作用もあります。血管収縮薬の点鼻噴霧を長期間頻繁につけると鼻粘膜自体が分厚くなって元に戻らなくなり、点鼻薬の効果も少なくなり、結果的に鼻づまりが治らなくなってしまいます。日常的に頻繁に使用することは避け、大事な用事があるときなど緊急時に使うことをお勧めします。

*参考文献:特定非営利活動法人 花粉情報協会「花粉症環境保健マニュアル」環境省環境保健部環境安全課

ドクター
筑波大学医学医療系 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
田中 秀峰 先生

鼻副鼻腔疾患に対し興味を持ち、外来診療や内視鏡手術をしています。
できるだけわかりやすく説明するように心がけています。

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