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【ドクターズコラム】ダニの身体の作りとは

ダニといえば多くの人にとっては、人を刺したり咬んだりする不快なムシ、あるいはアレルギーの原因になる困ったムシというイメージが強いのではないかと思います。もちろんそうした困ったダニが存在するのは事実ですが、実はダニという生き物の世界はとても幅広く、また奥が深いのです。そしてこの世の中はダニがいないと成立しないし、またそんなダニにも今、環境の変化による異変と危機が迫っているのです。

このコラム・シリーズでは、ダニ学に携わる筆者が、みなさんの知りたいダニの話や、知らなかったダニの話を紹介して、みなさんにダニとの正しい付き合い方を考えて頂ければと思います。まず第一弾は、ダニという生き物の基礎的特徴について解説してみます。

ダニの身体のつくり

ダニの口

ダニと昆虫をごっちゃに考える人も少なくないと思われますが、両者は、分類学的には全然違う生き物です。昆虫の体には、頭部、胸部、腹部という3つパーツが節で別れて存在し、胸部から足が36本、および羽が24枚という基本構造を示します。ダニの体には、昆虫のような節は存在せず、胴体はまるまるひとつだけ。その胴体に直接口(顎体部)や眼、脚がついています。

足は48本が原則。足が8本と聞くとクモを連想しますが、クモは、頭胸部と腹部という二つのパーツで身体が構成されており、ダニよりも複雑なつくりとなっています。

■ダニの特徴

■身体の大きさ
一般的にダニの身体はとても小さく、1ミリメートル以下の小さなものから、大きくてもせいぜい数ミリメートルぐらいまでしかありません。このシンプルで小さな身体のつくりが、様々な環境に適応するうえで有利に働いたと考えられます。

■ダニの目
ダニは眼を持つと書きましたが実は大半の種は眼を持ちません。単眼をもつ種もいますが、その眼は我々の目のように物の姿形や色を見分けるためにあるにではなく、光の明暗と方向を察知するためだけに存在します。目が見えないかわりに、ダニは脚や毛が「感覚器官」として機能し、身の回りの空間構造や環境を把握します。

■ダニの口
そしてダニの口は「顎体部(がくたいぶ)」といわれる身体の前端にある器官の先端にあります。口の周りには、一対の鋏角(きょうかく)という先端がハサミ状になった器官があり、その外側に一対の触肢(しょくし)という触角の役割をする器官が備わっています。大体の種では、この鋏角という器官が動物の顎の役割をして、食べ物を切り取ったり噛み砕いたりして口で吸い込む、という食べ方をします。

■ダニの親戚
ダニは昆虫類同様、身体が固い外殻で覆われ、脱皮して成長する節足動物の仲間になります。しかし、ダニは分類学的には昆虫とは遠い関係にあり、どちらかというとクモやサソリに近い関係にあります。

いつからダニはこの地球上に存在したのか?

古生代デボン紀の地層からダニの古い化石が発見されています。つまり今から遅くとも3.54億年前にはダニの祖先にあたる種がこの地球上に存在していたと考えられています。

ところで現世のダニ類たちは、土の中で腐食物を食べるものや、動物の血を吸うもの、昆虫を食べるものなど、その食性は多岐にわたりますが、初期のダニは何を餌としていたのでしょうか?

この時代には、爬虫類以上の高等動物はまだ出現していませんでした。だからダニの祖先は動物の血を吸うことは出来なかったはずです。恐らくダニの祖先は腐ったシダ植物や小さな昆虫や昆虫の卵等を捕食する土壌性の生活をおくっていたのではないかと推察されます。特にこの最古のダニは、現在のハシリダニという捕食性ダニの仲間とよく似た身体の構造をしていることからもこの推察が妥当と考えられます。

微小なダニの化石は残りにくい上に発見も難しいことから、ひょっとしたらもっと古い時代から多種多様なダニが生息していたかも知れません。しかも恐竜よりも古い時代から存在したのですから、恐竜の血を吸う、巨大なダニも進化していたかも知れません・・・

 ダニの種数

ダニは小さい動物ですが、進化の歴史が長い分、種数は多く、現在この地球上には分かっているだけで5万種以上生息するとされます。しかし、ダニの分類学者の数はその種数に対して圧倒的に少なく、新種発見は今でも続いています。未発見・未記載の種はまだ無尽蔵に存在すると考えられ、実際には、50万~100万種はいるのではないかと想像されるのです。

ちなみにダニの仲間はすべてダニ目という分類群に含まれます。例えば布団や寝具にわくダニはダニ目チリダニ科ヒョウヒダニ属のコナヒョウヒダニおよびヤケヒョウヒダニの2種が知られています。

次回ではダニの生き様と多様性についてご紹介します。

国立研究開発法人 国立環境研究所
生物・生態系環境研究センター
生態リスク評価・対策研究室 室長
五箇 公一 

1990年,京都大学大学院昆虫学専攻修士課程修了,1990年,宇部興産株式会社農薬研究部入社。1996年,京都大学博士号(論文博士)取得(農学)。1996年,国立環境研究所入所。 2016年から現職,現在に至る。
専門は保全生態学・環境毒性学・農薬科学・ダニ学
環境省・外来生物法の策定や農林水産省・農薬取締法の改正など、環境リスクにかかる国の法律・制度に専門家委員としてかかわる。
主な著書にクワガタムシが語る生物多 様性(集英社,2010),
昆虫科学読本. 日本昆虫科学連合・編(共立出版,2015), 感染症の生態学. 日本生態学会・編(共立出版,2016)など。
テレビや新聞等マスコミを通じて,生物多様性・生態リスクの啓蒙にもつとめる。

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