【ダニ博士コラム】 家の中に住むダニの特徴とその付き合い方

この地球上にダニは無数に生息しており、それぞれが生態系の中で重要な役割を果たしています。一方、人間が「住居」という、特殊な環境を作り出したことによって、その住居の中にもダニが住むようになりました。そして特殊な環境の中で、本来ならばあり得ない密度で大発生するケースも増えました。その結果、人間に対して有害な影響が生じるようになってしまい、今では、ダニは人間にとって「悪者」というイメージが強くなってしまいました。

いったい家の中にはどんなダニが、どれだけ、どこに生息しているのでしょうか?どうして人間に対して有害なのでしょうか?そしてその対策は?今回は家の中に住むダニの特徴とその付き合い方について解説してみたいと思います。

近年の住宅事情と家の中に住むダニ

現代の住宅において発生するダニは、おもにチリダニ類になります。チリダニとは文字通り「塵(ちり)」にわくダニで、屋内に溜まる人間のふけや垢、食べかすなどを餌として発生します。

かつてはイエダニや、チーズ等の高湿度食品にわくコナダニなども家に住むダニの大御所でしたが、近年の宅地の都市化、住宅の近代化に伴い、これらのダニは通常の家庭で発生することは少なくなりました。もちろん、田舎の古い住宅では、まだこれらのダニが発生することはあります。

しかし、近年の住宅事情は、やはり近郊住宅地や都市住宅にお住まいの方がほとんどであろうと拝察しますので、ここでは、そうした読者の最大の関心事であろう、カーペットや布団に発生するチリダニ類に焦点を当てて解説してみたいと思います。

ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニ

家の中に住むチリダニ類は主にヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの2種になります。いずれも身体の大きさがわずか0.2〜0.4ミリ程度で、まず肉眼で見ることは非常に困難です。

これらのチリダニのおもな餌は、前述の通り、人間の身体からでる垢やフケ、あるいは食事の際に床に落とした食べかす、などの「ゴミ」になります。なので、家の中のおもな住処は、布団や枕の中、床の上のホコリや、カーペットの中になります。また、台所に紙袋に入れて放置してある小麦粉等の食品用粉ものにも発生します。

その生息数は、環境条件によっても大きく左右されますが、ホコリ1g中にだいたい1,000匹ぐらいのダニがいるとされ、垢やホコリの溜まった布団の中には軽く万単位でダニが生息しており、家の中全体では百万、千万、さらには億単位のダニがいると考えていいと思われます。

ヤケヒョウヒダニ(体調0.2mm)
コナヒョウヒダニ(体長0.2ミリ)

ヒョウヒダニによる被害

ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニが大量に発生すると、その死体がバラバラになった「粉塵(ふんじん)」や、これらのダニの糞が、大量に住宅内に舞うことになります。これらの細かいダニの死体や糞を人間が吸うと、人間の気管の中まで到達し、人間の身体がこれらダニの死体や糞をアレルゲンと認識して抗体を作るようになります。これが繰り返されると、身体がアレルゲンに対して過剰な免疫反応を示すようになり、アレルギー症状が生じることになります。

ダニアレルギーの症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまり等の軽微な反応から気管支炎等の重篤なものまでありますが、もっとも怖い症状が、「アナフィラキシーショック」と言われる急性の全身性かつ重篤な反応です。体質によって、僅かなアレルゲンが体内に入るだけで、劇症型の反応が生じることがあり、最悪死に至るケースがあります。

もっとも有名なアナフィラキシー症状は、ハチに複数回刺されることによってハチ毒に対する抗体が生じて、次にハチに刺されただけで、全身の麻痺、痙攣、呼吸困難、心臓発作などの強い全身症状に急激に襲われるケースです。実際にこうしたハチアレルギーによって、国内だけでも年間10〜30名の方が亡くなられています。

ダニアレルギーもバカには出来ず、ダニ抗体をもった男性が、ヒョウヒダニが大量に発生したお好み焼き粉を使って作ったお好み焼きを食べたところ、直後にアナフィラキシーショックを発症し、病院に救急搬送されたという事故が大阪で起こっています。

また、ヒョウヒダニ(チリダニ)が屋内で大量に発生すると、それを食べに肉食性のツメダニが発生します。そしてこのツメダニが間違って人間にも噛み付いて皮膚に湿疹や痒みを生じさせることもあります。

ヒョウヒダニ(チリダニ)を撃退するための対策

では、コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどチリダニ類を家の中で増やさないためにはどうすればいいでしょうか?その答えは、逆にどんな環境がダニを増やしているかを考えると分かり易いと思います。

ダニ類は、身体が小さい節足動物であるため、体内に水分を蓄えることができず、湿度が高いところを好みます。チリダニ類は湿度60〜80%の環境でもっとも増え易いとされます。また変温動物なので熱すぎず、寒すぎず、20℃〜28℃くらいの暖かい環境を好みます。当然、餌となる「塵ゴミ」が沢山あるところほど、たくさん増えます。

従って、これらの環境を取り除くことがダニを増やさないコツとなります。まず部屋内の湿度を一時的でも低くすることを心がけます。つまり、こまめに換気して、部屋の空気をリフレッシュすること、そして、こまめに掃除をして餌となるゴミやホコリをためないことが大事です。

このとき、掃除機でホコリを空気中に巻き上げると、ダニの死体や糞を吸いこみやすくなる可能性もあるので、最初に濡れ雑巾等で床をふいて、湿らせてから掃除機をかけると良いでしょう。

布団や枕をしっかり干して、乾燥を保つことが大事です。特に最近では布団を直接床に敷いて、上げ下ろしするということも減り、ベッドにマットレスと布団が敷きっぱなしになっているお宅も多いと思われますが、この万年床は、就寝時に出る汗と垢がしっかりと蓄積されており、ダニにとっては格好の住処となります。

もっとも、最近では集合住宅等では布団を干しにくい環境もあるようですので、その場合は布団乾燥機を利用するのも有効な手です。特にダニは高温に弱く、60℃以上でほぼ完全に死滅します。布団乾燥機で布団の中を高温・低湿度にすることで布団中のダニの増殖を抑えます。近年、開発された温風機能付きふとんクリーナーも効果的と思われます。

ただし、死んでしまったダニをそのままにしておくと結局それがアレルゲンとなるので、干した布団には掃除機をかけるなどして、布団中のダニの死体や脱皮殻、糞を除去することがアレルギー予防として有効と考えられます。

ダニ抑制の3つのポイント

食品の管理も大事-粉物の保管方法のすすめ

台所においてある小麦粉やお好み焼き粉、パン粉等の粉ものの管理も要注意です。紙袋の口をクリップ等で閉じているぐらいではダニの侵入は防げません。またどんなに密封された瓶やタッパーに入れて保管しても、ダニがキャップや蓋にへばりついて待ち構えていますから、開封時に中にポロッと落ちて、わずか数個体からでも、何万、何十万と袋の中で増殖することになります。

こうした粉ものの保管は冷蔵に中に入れて行います。ダニは変温動物のため5℃以下という冷温環境では、活動も増殖もできません。万一、粉の中にダニが混入したとしても、冷温状態に保っておけばダニが異常に増えることは避けられます。

徹底的にダニを撃退するなら、個人的には冷凍保管をお勧めします。マイナス20℃に曝され続ければ、ダニは完全に死滅します。

生活様式とダニ

かつての古い住宅様式と生活様式では、現在ほどチリダニ類が異常発生することはなかったと思われます。その理由は、家には必ずおばあちゃんかお母さんがいて、毎日掃除や洗濯、布団干しをしてくれて、また部屋の通気性もよく、その分、湿度も低く、また冬はそこそこ家の中でも冷え込んでいたからだと考えられます。つまりチリダニ類にとっては、とても住みにくい環境が常に維持されていました。

しかし、現代では、多くの家族が核家族化・共働き化しており、日中は家が閉じられたままで、室内の空気は滞留し、また密閉性がいいので湿度も温度も高く維持され、さらに掃除も週に一回、月に一回程度で、見えないところにホコリやゴミが溜まり易くなっている。年中あたたかで快適・便利な生活は人間にとってだけでなく、ダニにとっても快適な住処となっているのです。

まずは、ダニの生態と特徴をよく知って、彼らを増やしすぎないよう、生活の中にちょっとした工夫を取り入れ、清潔な環境を保つことが大切です。

国立研究開発法人 国立環境研究所
生物・生態系環境研究センター
生態リスク評価・対策研究室 室長
五箇 公一 先生

1990年,京都大学大学院昆虫学専攻修士課程修了,1990年,宇部興産株式会社農薬研究部入社。1996年,京都大学博士号(論文博士)取得(農学)。1996年,国立環境研究所入所。 2016年から現職,現在に至る。
専門は保全生態学・環境毒性学・農薬科学・ダニ学。環境省・外来生物法の策定や農林水産省・農薬取締法の改正など、環境リスクにかかる国の法律・制度に専門家委員としてかかわる。
主な著書にクワガタムシが語る生物多 様性(集英社,2010),昆虫科学読本. 日本昆虫科学連合・編(共立出版,2015), 感染症の生態学. 日本生態学会・編(共立出版,2016)など。テレビや新聞等マスコミを通じて,生物多様性・生態リスクの啓蒙にもつとめる。

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