【ドクターズコラム】寝る子は育つということわざは本当なの?

【ドクターズコラム】寝る子は育つということわざは本当なの?

日本には「寝る子は育つ」ということわざがあります。昔はこどもを早く寝かせるためのものだと思っていましたが、「よく寝る子は健康で、丈夫に育っていく」意味のことわざは、どうやってうまれたのでしょうか?

■睡眠の大切さ

人は皆、昼間活動をして1日の終わりにぐっすりと眠ることにより、体を休ませ、頭を休ませ、新たな1日を迎えます。ですから、寝不足の日はなんとなく調子悪いですよね。特にこどもにとっての睡眠は、実は疲労回復だけでない大切な意味があるのです。

■こどもの成長とは

こどもの成長とは大きく分けると
①頭(脳)、心の成長
②体の成長です。
これらにより知能が発達し、心が成長し、身長が伸び、健康に育っていくのです。一般的には幼児期、思春期にこれらの成長が顕著にみられます。これらは、寝るだけで得られるものではないのです。

■睡眠とは

睡眠には、深い眠りの「ノンレム睡眠」浅い眠りの「レム睡眠」の二つに分かれます。

睡眠は2種類の睡眠が約90分位に交互に訪れます。この二つの睡眠は役割が違い、主にノンレム睡眠は脳が休息する睡眠で、レム睡眠は体が休息する睡眠となります。そして、これらは成長にどのように関与するのでしょうか?

■脳と身体の成長

  • 頭(脳)の成長

脳の成長に関与するのがレム睡眠です。この時間帯、体は休息していますが脳は活発に働いており、その日の記憶整理や思考学習を構築し神経系が発達していくのです。

  • 身体の成長

身体の成長に関与するのがノンレム睡眠です。この時間帯、脳が休息しており、骨の成長や筋肉の成長、骨の休息がここで行われるのです。この成長に欠かせないのが成長ホルモンになります。成長ホルモンは正確にはヒト成長ホルモン(hGH)といい、脳の下垂体より分泌されるホルモンです。主に乳児期より思春期にかけ分泌されますが、このホルモンが骨の成長を促し、身長が伸び、また蛋白質合成を促し、筋肉が発達していきます。
そしてこのホルモンは睡眠中、特にノンレム睡眠時間帯に多く分泌されるのです。中でも特に最初に訪れるノンレム睡眠時間帯に多く分泌されるのです。ですから、こどもの成長はただ寝ればよいというのではなく、しっかり熟睡する時間を確保するということが重要となります。睡眠時間が短かったり、何度も起きてしまうようなことでは十分な成長ホルモンは分泌されずに身長の伸びが悪くなることもあるのです。

■最近のこども達はどうでしょうか?

クリニック待合室では、小さなこども達はスマホやタブレットでゲームやアプリに夢中です。中には夜までタブレットを離さず遅くまで起きているこどももおられます。中学生になるとそれらに加え、部活動や勉強などで睡眠時間の減っているこどももいます。大事な成長ホルモンの分泌をみすみす受け取らないようにも思えます。小学生低学年で10時間、中学生まで9時間、高校生で8時間の睡眠が必要とされていますが、厚生労働省は、国際的にみて日本のこどもの睡眠時間は短いとし10代前半までは8時間以上の睡眠時間を確保するよう指針もでています。

「寝る子は育つ」。このことわざには、このような隠された深い意味があったのですね。

お子様の頭脳明晰、容姿端麗のためにも熟睡できる環境作りがいま、求められているのではないでしょうか。

海老名こっここどもクリニック 
院長 野村雅寛

昭和60年 東海大学医学部卒業。卒業後、東海大学医学部付属病院 小児科、沖縄県立名護病院小児科をへて東海大学医学部付属病院NICU,総合周産期センターNICU医長をへ。25年の大学病院勤務ののち、海老名にて開業。赤ちゃんからこどもの成長、発達領域を専門分野とする。

快眠は温度で決まる。寝床内の温度をコントロール。夏は涼しく冬暖かく。

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