【ドクターズコラム】アスリートと睡眠について

今回のコラムでは睡眠の重要性やアスリートがどのように試合に臨んでいるか、特に海外への遠征で時差を伴う場合について書いてみたいと思います。

睡眠には概日リズム(サーカディアン・リズム)が存在しています。約24時間周期で変動する生理現象で、動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物に存在しているとされています。

このリズムにより身体の中の体温や内分泌機能、循環機能の状態を整えることで暮らしやすい状態を作っています。

一般的には体内時計ともいいますが、完全に固定されたものではなく光や温度、食事など外界からの刺激によって日々修正されています。

■海外遠征とコンディションの調整

皆さんも海外旅行の際に着いた当日は全く寝付けなかったり、逆に強い眠気や体調不良で十分に観光が出来なかった経験があるのではないでしょうか。

トップアスリートになれば、日本国内での大会や試合だけでなく海外での試合も増えてくるので日々の練習のための睡眠は勿論、試合に備えたコンディショニングとしての睡眠のとり方が非常用に重要になってきます。

アスリートの海外遠征者を対象とした調査によると、遠征先で体調を崩してよく困っていると回答したのは全体の10%程度に上ると報告されています1)

コンディショニングの良し悪しは試合への結果に直結することは想像に難くないとおもいます。

では海外遠征の時差にどうやって対策しているのでしょうか?

サーカディアンリズムは、睡眠のスケジュール、光、メラトニンというホルモンの影響を強く受けているのでそれぞれをコントロールすることで上手に遠征先でも睡眠をとることができます。

海外へ行く際に推奨されている方法として睡眠のスケジュールを目的地の時計を合わせ、出発前に数時間シフトさせておくことという方法があります。

つまり出発前から1日30分から1時間程度を目安に遠征先の生活へ合わせていくと無理なく到着後に移行することができます。渡航前の生活との兼ね合いで目安はトータル3時間程度のシフトが妥当と思われます。

これは旅行でも同様に体調や眠気を改善させる方法として有効だと思われます。

■リズムをシフトさせる方法

リズムをシフトさせる方法として、いくつか方法をあげます。

  • 可能ならば高照度の光を浴びること

サーカディアンリズムのシフトには、2,500ルクス以上の高照度光を用いると効果が大きいと言われています。一般的な住居で は、照明を使っていても1,000ルクス以下のことが多いので、可能ならば高照度の光を浴びることでリズムをかえてくれます。

  • お薬を服用する方法

お薬を使う方法もあります。さきほど上げたメラトニンというホルモンの受容体に対して作用をもつお薬があります。メラトニン受容体に作用することで覚醒と睡眠の リズムを整えて、脳とカラダを「寝付きやすい状態」へと誘導し、時差調整の時に利用します。これ以外にもお薬の種類はいくつかありますが、アスリートの場合はいずれにしても薬剤を使用する前には必ずドーピング禁止物質ではないこと確認を行わなければなりません。

  • 睡眠時の体温コントロール

体温のコントロールも重要です。入眠後に出現する深い眠りは、脳と体の回復を促進します。入眠前に入浴するなど 体を温めてリラックスしてから睡眠を取ると良いでしょう。
試合前にコンディショニングを整えることは試合の結果に直結してきます。
アスリートは偶然出来上がるのを待つのではなく、自ら良いコンディションを作れるよう努力しています。

参考文献
1)星川雅子ら,日本人トップアスリートの海外遠征とコンディショニング : 質問紙調査の結果から日本臨床スポーツ医学会誌 25(3), 435-444, 2017
2)JOC Conditioning Guide for Rio 2016, JAPANESE OLYMPIC COMMITTEE 公益財団法人 日本オリンピック委員会

医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
亀田メディカルセンター スポーツ医学科 
高澤修三

寝床内温度コントロールと体圧分散の重要性

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