【ドクターズコラム】ペットとアレルギー。共存する為に。

【ドクターズコラム】ペットとアレルギー。共存する為に。

ペットフードメーカーの業界団体「一般社団法人ペットフード協会」(東京都)によりますと、2017年10月時点の全国の犬の飼育頭数は約892万頭、猫の飼育頭数は約952万6000頭と推計されています。ペットを家族の一員ととらえる層は広がっており、核家族化とともにその数も増えていることが考えられます。とくにお子さんの数が少ない家庭では、ペットの存在がお子さんにとって、心身ともにかけがえのないものとなっているのではないでしょうか。アレルゲンを排除して家庭内で清潔な環境整備を行うなどの工夫や配慮をしている人も多いと思います。アレルギーをお持ちのお子さんとペットが安心して一緒に暮らせるかどうかは話題として気になるところです。

■動物アレルギーはどうやって起こるの?

いちばん多いのはネコアレルギーで、フケが主要なアレルゲン。

動物自体がアレルギーの原因となる場合、つまり動物アレルギーの場合、原因としてはネコが最多で、次にイヌだといわれています。その他、ウサギ、モルモット、ハムスター、鳥なども原因となります。正確にはペットの毛やフケがアレルゲン(アレルギー物質)といわれています。ネコの主要アレルゲンであるFel d1(フェルディーワン)は、ネコの皮膚の皮脂腺からの分泌物や唾液に含まれており、皮膚や毛の表面に付着しています。イヌの主要アレルゲンであるCan f1(キャンエフワン)は、唾液中の成分ですが毛づくろいなどの動作によって皮膚や毛に付着します。これらのアレルゲンは、非常に細かい粒子として存在するので、いったん舞い上がると数時間空気中に浮遊し続けます。動物アレルギーのある人がネコやイヌを室内で飼っている家に入ると、ネコなどがいなくても症状が出てしまいます。

■どんな症状が出るの?~基本的には一般的なアレルギーと同じ機序

動物アレルギーも一般的なアレルギーも、よくある症状としては急性の目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、咳、皮膚のかゆみやじんま疹などです。稀にアナフィラキシーといって循環器や呼吸器に重篤な症状を起こすことがあります。また、もともと気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対する慢性的な増悪をきたします。とくに前者のタイプは血液検査で、アレルゲンに特異的なIgE抗体という成分を測定することにより、診断されます。動物アレルギーの関してもネコのフケやイヌのフケの特異的なIgEの成分の検出で診断が可能です。

●喘息やほかのアレルギーを持っている人はどうなるの?~リスクは上がるという報告と下がるという報告がある。

アレルギーに関係する反応は生化学的には共通する機序や部分が多いので、ペットのフケが直接的なアレルゲンでなくとも、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対する影響が考えられます。子どもがペットとふれあうことで、喘息にかかるリスクが高まる、という報告がある一方で、幼い頃にペットとふれあうと、アトピー性疾患にかかるリスクが軽減する、という報告もあります。

  •  直近の報告では小児喘息の遺伝要因に対する作用。
  • 小児喘息は、遺伝要因と環境要因との複雑な相互作用によって引き起こされるものと考えられています。遺伝要因の部分で、小児喘息、肺炎、細気管支炎にかかりやすい遺伝子型を持つ子どもが、生まれたときからネコと接触していると、その発症リスクが軽減される、という報告がデンマークの研究グループから発表されました。このことは、ネコと日常的に接触するという環境と喘息の発症リスクが高い遺伝子との間で何らかの相互作用があることを示すものであると考えられます。

    喘息やアトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患は、単にアレルゲンとの接触頻度でだけでなく遺伝子や環境によっても左右されます。アレルギー性疾患も持ったお子さんが安心してペットと一緒に暮らせそうだということは複数の報告でいわれているものの、現状では生理学的な機序として遺伝子レベルでの何らかの相互作用が推定されており、まだ明らかにされていない部分が多いところです。このようにひとくちにアレルギーといっても体質や遺伝子の差で一筋縄ではいきません。大切なことはお子さんの体質を理解し、急性期の症状(蕁麻疹などのほか呼吸の状態や動悸、嘔気など)と慢性期の症状の推移(喘息発作の頻度や重症度)を見逃さずに少しでも気になることがあれば、すぐに専門の医療機関を受診することが大切です。

    【参考文献】

    Benjamin J.et.al. Systematic review: Exposure to pets and risk of asthma and asthma-like symptoms. J ALLERGY CLIN IMMUNOL.March 2001 Volume 107, Issue 3, Pages 455–460.

    P. Nafstad. et. al. Exposure to pets and atopy‐related diseases in the first 4 years of life. Allergy. Volume56, Issue4, April 2001,Pages 307-312.

    Jakob Stokholm. et. al. Cat exposure in early life decreases asthma risk from the 17q21 high-risk variant. Journal of Allergy and Clinical Immunology. Volume 141, Issue 5, May 2018, Pages 1598-1606

    亀田総合病院 総合内科 

    竜 彰(りゅう あきら)

    アレルゲンを除去するふとん専用クリーナー レイコップRN

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