【ドクターズコラム】ペットとアレルギー

【ドクターズコラム】ペットとアレルギー

アレルギーの原因となるペットの主なものは、室内で飼育される中小動物の哺乳動物、すなわちネコ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモット、マウスなどです。

ペットのアレルギーとしてはネコ、イヌなどの体垢、体毛、羽、唾液、尿などがアレルゲンとして認められています。また、実験動物として扱われることの多い、ウサギ、ハムスター、マウス、モルモットなどに対するアレルギーも知られています。ここではペットアレルゲンの特徴と環境整備の方法についてお話しします。

ペットアレルゲンの特徴

わが国ではネコ、イヌが最も注目されており、主要なアレルゲン成分として、それぞれFel d 1(ネコアレルゲン)、Can f 1(イヌアレルゲン)などのアレルゲンが報告されています。特にネコはイヌよりも短期間でアレルギー体質を獲得することが知られており、アレルギー症状も強いと考えられています。ネコアレルゲンはその大きさである分子量が非常に小さく軽いため、容易に長時間空中を浮遊します。ネコを飼育していない家庭においても、簡単に外から侵入する可能性があり、学校などを介してアレルゲンを持ち帰りやすいと考えられています。また、ネコアレルゲンは壁やカーペット(じゅうたん)、寝具(ふとん、マットレス、ベッド)、家具などに付着しやすいと言われています。

環境整備について

ハムスター、モルモット、ウサギなどの屋内で飼育するペットは、手放すことで比較的早く効果が表れます。ネコやイヌなどの屋外にも出るペットについてはアレルゲンの完全除去はなかなか難しく、数年を要することが知られています。つまり、ネコやイヌを手放したあとも室内のアレルゲンはしつこく残ってしまうということです。特にネコアレルゲン対策としては下記のことが言われています。

 1.ネコの飼育をやめる

 2.屋外で飼い、寝室に入れない 

 3.ネコの飼育環境を清潔に保つ

 4.床のカーペットをやめ、フローリングにする

 5.通気性をよくし、掃除を励行する

 6.掃除機掛けの前に、拭き掃除を行う

 7.週2回以上ネコを洗う

以上が代表的な環境整備の方法ですが、ネコに関しては環境整備を開始してもすぐにアレルギーの症状が改善するわけではないことを知っておくことが必要です。

アレルゲンには地域性がある

寝具のアレルゲン量を比較した調査で、日本ではダニアレルゲンがネコやイヌのアレルゲンよりも10倍以上多いのに対して、欧米ではネコやイヌのアレルゲンの方がダニアレルゲンよりも約2倍多いという調査報告もあり、気候や生活習慣の違いによって大きな差が見られています。もともとネコのアレルゲンが多い地域ではネコを飼育している年代(胎内期、乳幼児期、学童期)によってネコに対するアレルギーの体質獲得に違いがあるなど、アレルギーの体質獲得、体質改善についてはまだまだ学問的に解決されていないことがたくさんあります。

ドクター
国立病院機構埼玉病院呼吸器内科
釣木澤 尚実 先生

医学博士
長崎大学医学部卒業/横浜市立大学医学部大学院卒業
現国立病院機構埼玉病院 呼吸器内科
専門;アレルギー・呼吸器病学

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