【ドクターズコラム】ハウスダストとアレルギー性鼻炎の予防と緩和

【ドクターズコラム】ハウスダストとアレルギー性鼻炎の予防と緩和

「くしゃみ・鼻みず・鼻づまり」を代表的な症状として認めるアレルギー性鼻炎ですが、その代表的な原因(アレルゲン)は季節性アレルギーと呼ばれる、ある時期にのみ発症するスギを代表とした花粉症や一年を通して起きる通年性アレルギーとしてダニを中心としたハウスダストなどがよく知られています。

これらのアレルギーの日本での有病率は約3割と言われていますが、この10年間でもずいぶん増加しているとされており、近年では小児で有病率はハウスダスト23%、スギ14%ですが、10代全体で見るとスギ花粉症を発症する人がより増加し、ハウスダスト37%、スギ34%と推定されています。つまり半数近くの人がアレルギー性鼻炎で悩んでいることになります。

■「アレルギーマーチ」の原因

さらに、ダニなどのアレルゲンはアレルギー性鼻炎以外にも、喘息やアトピー性皮膚炎、さらにはこれらが次々と発症する「アレルギーマーチ」の原因となることが知られています。アレルギーマーチは乳児期にミルクを主なアレルゲンとした食物アレルギーやアトピー性皮膚炎で発症し、その後、ダニやハウスダストなどに感作されて喘息や鼻炎を発症することが知られています。これらダニなどの物質がアレルゲンとして成立するメカニズムは以下のように説明されています。

■体を守るための免疫機能による異物を排除するメカニズム

まず始めに、ダニの死骸やフンなどの異物が身体の中に入ってくると、体を守るための免疫機能による異物を排除するメカニズムが働き始め、その物質だけに反応する特異的IgE抗体が作られます。この特異的IgE抗体ができた状態は「感作」と呼ばれ、次に同じ物質が再び体内に入ってくると、異物を排除しようとして記憶されていた特異的IgE抗体が作り出されてその物質に結合します。この結合したという情報を元に、細胞の中にあるケミカルメディエーターと呼ばれるヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が放出され、ヒスタミンは神経を刺激してくしゃみと鼻水を起こし、ロイコトリエンは血管を刺激して鼻づまりを引き起こします。

この、通年性アレルギー性鼻炎の代表的なアレルゲンの一つであるダニは人の生活に密着しており、人の垢やフケ、食べこぼしなどをエサとして、室温20℃以上、湿度60%以上だと繁殖しやすいとされています。

■ダニはふとんだけじゃなく、ぬいぐるみにもウジャウジャ

布団で増えることが多いのですが、それ以外にもタタミやじゅうたん、ソファー、ぬいぐるみなどもダニのすみかになっていることが知られています。そのようなダニ対策の基本は部屋の掃除機がけと布団の管理になります。ふとんにもクリーナーをこまめにかけることで、ダニを減らすだけでなくダニのエサとなる人の垢やフケ、食べこぼしを減らしダニの繁殖をある程度防ぐことができます。ダニ対策には部屋の掃除だけでは不十分で、寝具の手入れが重要になります。寝具はダニの増殖に必要な条件がすべてそろう上に、過ごす時間が長いためしっかりとした対策が症状の緩和に役立ちます。布団を日光に当てることや布団乾燥機の使用、就寝前に布団にふとんクリーナーをかけること、あるいはアレルゲンを通さない布団カバーの使用などが有効です。

■天日干しではハウスダスト(ダニ・ほこり)は除去できません

では、アレルギー疾患の根本的な対策として、アレルギー反応を起こさない、つまり感作されないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?

人は一度感作されてしまうと、免疫機構は一生それを記憶し続けるため、その症状は一生続くということになります。そのためには、感作されないようにする、予防が理想であることになります。ハウスダスト、ダニに感作されないようにするには、感作される前から部屋、布団などからアレルゲンをなるべく排除するのが最善の対策ということになります。こまめな掃除や、寝る前の布団の掃除機がけなどで身の回りを清潔な環境に整備して、健康な生活を送りたいものです。

くろだ小児科・耳鼻科

http://www.kuroda-ped-ent.com/

小児科専門医、日本禁煙学会認定指導者、医学博士

山梨大学医学部小児科を始め、山梨県立中央病院、国立甲府病院等で小児血液・腫瘍を専門として、新生児医療や重症心身障害者の診療などにも従事してきたが、これまでの経験と知識を生かすべく、2017年4月に山梨県甲斐市に耳鼻科医の妻と「くろだ小児科・耳鼻科」を開院。また、NPO法人甲斐スポーツ振興会を立ち上げ、スポーツに医学のメスを入れるべく活動中。

掃除機にはできないことがある

ブログに戻る