【ドクターズコラム】アレルギー症状を引き起こすアレルゲンの種類と室内で増殖しやすい場所とは

【ドクターズコラム】アレルギー症状を引き起こすアレルゲンの種類と室内で増殖しやすい場所とは

室内塵(ハウスダスト : house dust)とはダニ類、動物の毛や体垢、糞や尿、綿、絹などの繊維類、花粉、真菌、細菌などの混合物をさします。今回は室内におけるこれらのアレルゲンの種類と分布についてお話しします。

アレルゲンの潜む場所

ダニアレルゲン

人の皮膚の落屑(*らくせつ)がエサとなる
- 主に寝具・ふとん/マットレス・ベッド・カーペット・畳など

カビアレルゲン

高温多湿の場所で増殖。湿気がこもる、押入れなども注意
- 浴室・台所・トイレ・空調ダクトなど

ペットアレルゲン

特に猫アレルゲンは長時間空中に浮遊しやすい、繊維以外にも付着
- 壁、カーペット、寝具、家具など

花粉アレルゲン

窓の隙間や服から室内へ侵入し床面に落下
- カーペット、トイレマット、敷布団、畳など

*落屑(らくせつ):皮膚の角質が浮き上がってポロポロと剥がれ落ちるものをいいます(フケ=皮膚の落屑の一部)

①ダニアレルゲン

わが国の住居内で最も数多く検出されるダニはチリダニ科ヒョウヒダニ属と呼ばれ、なかでもヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニの2種類がほとんどを占めています。ヒョウヒダニの主なアレルゲンにはDer 1とDer 2があり、Der 1は主にダニの排泄物で熱に不安定な蛋白質であり、これ自体にシステインプロテアーゼ活性があることからダニの消化性酵素であると考えられています。

Der 2はダニの虫体で生きている生ダニよりも死んで細塵化した虫骸で熱に安定な蛋白質です。Der 1とDer 2は交差反応性があるため、アレルギー反応を起こすということでは両者は同等と考えられています。

ダニの発育至適温度は25℃前後、至適湿度は65-75%であると考えられています。ダニはヒトの皮膚の落屑を餌としており、住居内のダニの繁殖場所としてはカーペット(じゅうたん)、畳、寝具(ふとん、マットレス、ベッドなど)が挙げられます。

一般的には、床面がカーペットや畳の場合はフローリングに比較してダニの検出率が高いと考えられています。またぬいぐるみ、布製ソファー、カーテンなどの布もダニの発生源となります。

湿度が50%以下の環境ではダニの発育は抑制されると考えられています。我が国では生きているチリダニは6-7月にピークがあり、死ダニは9-10月に多く、1-2月に低い傾向があるといわれています。

②真菌(カビ)アレルゲン

カビは高温、多湿条件下でよく発育し、特に室内では浴室、洗面所、トイレ、台所、押入れなど水滴がいつもある場所や湿度が高い場所、室内の植物に多く発生します。
また日常的に接触する室内気中、ハウスダスト、カーペット、畳、寝具、ぬいぐるみ、通気管、空調ダクト(セントラルヒーティングやエアコン)や送水管でも増殖します。

わが国における代表的なカビはアスペルギルス、ペニシリウム、クラドスポリウム、アルテルナリアなどの他、酵母のカンジダ、マラセチア、トリコスポロン、クリプトコッカスなどが挙げられます。

③ペットアレルゲン

ペット、特にネコアレルゲンは分子量が小さく、容易に長時間空中に浮遊するため、ネコを飼育していない家庭においても学校などを介してアレルゲンを持ち帰りやすいと考えられています。

またネコアレルゲンは壁やカーペット、寝具、家具などに付着しやすいと言われています。

④花粉アレルゲン

例えばスギアレルゲンは直径30μmの球状の粒子で屋外では風に乗って数十キロメートルも飛んできます。窓やドアの開け閉めにおいてもわずかな隙間から室内に侵入します。無風状態では30秒間程度で1m下降するため、室内に入り込んだ花粉はまもなく床面に落下します。
室内ではカーペット、トイレマット、敷き布団、畳の順に多いようです。

次回はダニアレルゲンに対する効果的な環境整備指導についてお話しします。

  • 参考文献
  • 1・喘息予防・管理ガイドライン2012 一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会。東京 協和企画
  • 2・福田 健・編。総合アレルギー学。原因抗原の回避・除去 p275-282 2010 南山堂 東京
  • 3・宮本昭正・監修。臨床アレルギー学。原因の回避、除去 p200-206 2007南江堂 東京
  • 4・Platts-Mills AE, latts-Mills TA, Vervloet D, Thomas WR, Aalberse RC, Chapman MD. Indoor allergens and asthma: report of the Third International Workshop. J Allergy Clin Immunol.1997; 100:S2–24.
  • 5・ARIA2008日本語版 Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma(ARIA) 2008 Update. Allergy 2008;63(Supple 86)

ドクター
国立病院機構埼玉病院 呼吸器内科
釣木澤 尚実先生

長崎大学医学部卒業
横浜市立大学医学部大学院卒業
現国立病院機構埼玉病院 呼吸器内科
専門:アレルギー・呼吸器病学

ハウスダストを徹底除去

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