【ドクターズコラム】睡眠時無呼吸症候群に対して自分で出来ること

■睡眠時無呼吸症候群を放置している人は300万人以上

2003年に乗客約800人を乗せて時速270kmで走行中の山陽新幹線ひかり号が、岡山駅で急停車した事件がありました。はじめは単なる運転手の居眠りが原因と報道されましたが、その後の調査で「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気のせいで眠り込んでいたことが分かりました。この事件をきっかけに、この病気が広く知られるようになりました。

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている時に呼吸が止まる無呼吸や、呼吸の回数が減る低呼吸が原因で、睡眠障害が起こってしまう病気です。

日本での調査によると、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは男性の3~7%、女性では2~5%もいると報告されています。このことから日本には睡眠時無呼吸症候群の人が500万人もいると推定されています。このうち、治療が必要なのに受けていない患者さんが300万人以上いるともいわれています。

「睡眠時無呼吸症候群は太った中年の男性に多い」と、思っている人がいるかもしれません。全年齢で見ると、男性は女性の3~5倍も睡眠時無呼吸症候群になりやすく、しかも軽症例に比べて重症になると男女比が拡大します。しかし、女性では睡眠時無呼吸症候群が閉経後に急増し、60歳以上では男女ほぼ同じくらいの比率になります。

■最も多いのは睡眠時無呼吸症候群「閉塞型(窒息タイプ)」

睡眠時無呼吸症候群は無呼吸の原因から、「閉塞(へいそく)型」「中枢型」「混合型」の3つのタイプに分かれます。

  • 最も多いのが、気道(鼻や口から肺に至るまでの空気の通り道)が詰まって呼吸できなくなるタイプで、「閉塞型」といいます。眠っている間に何回も、窒息している状態です。
  • 脳にある呼吸運動の司令塔の働きに異常が起こり、呼吸に関する筋肉に指令が届かなくなって呼吸できなくなるタイプを「中枢型」といいます。脳血管障害やうっ血性心不全、高山病などが原因の睡眠時無呼吸症候群もこのタイプに含まれます。
  • 1回の無呼吸発作の中で、中枢型に引き続いて閉塞型が起こるタイプが「混合型」です。

■肥満や小顎は無呼吸のリスクファクター

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、生理的な原因と鼻やノドの形の異常の2つが重なって発症します。眠ると筋肉の緊張が解け、体がグッタリとします。ノドの周りや舌の筋肉も例外ではなく、起きている時に比べて睡眠中は気道が狭くなりがちです。また、仰向けで寝ると、重力の作用で舌がノドに落ち込みやすくなります。

健康な人なら、睡眠中に起こる生理的な変化だけでは、軽いイビキをかく程度でしかありません。しかし、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの鼻の病気や扁桃腺の肥大があると、気道が閉塞しやすくなり無呼吸に陥ってしまいます。肥満の人はノドにも脂肪がついていて、もともと気道が狭くなっていて無呼吸を起こしやすくなります。また、顎が小さい人は舌が口の中に納まりきらず、ノドの方へ落ち込みやすくなります。

■睡眠時無呼吸症候群に自分で気づく方法

睡眠時無呼吸症候群に特徴的な症状は、繰り返される無呼吸いびきです。多くの場合は、ベッドパートナーなどに指摘されて初めてわかります。しかし、最近では自分で確認できるようになりました。スマートフォンのアプリに、睡眠中の音を録音できるものがあります。これを使うと、無呼吸の確認は難しいですが、いびきをかいているかどうかは分かります。いびきの回数が多いとか、いびきの音が大きい時には、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。

特に原因が思い当たらないのに、夜中によく目が覚めたり熟睡した感じがしないときは、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。呼吸が止まると苦しくなって、呼吸をするために目が覚めます。十分な睡眠時間をとっているはずなのに、睡眠中に無呼吸が起こると睡眠の質が悪くなり熟睡感を得られません。

朝、起きたときに、口の中が渇いていたりノドが痛い時にも要注意です。口の渇きやノドの痛みは、睡眠中の口呼吸の証拠です。睡眠中に口を開けて呼吸をしていると、舌がノドに落ち込んで呼吸が止まりやすくなります。

日中の眠気が激しい時も、過眠症とともに睡眠時無呼吸症候群を疑う必要があります。自分では十分な睡眠時間をとっているつもりでも、睡眠中の無呼吸のためしっかり眠れていない状態だと、日中の眠気が強くなります。


睡眠時無呼吸症候群が疑われたら、一度、きちんと検査を受けましょう。
最近では呼吸の状態を調べる機械を借りて、自宅で睡眠時無呼吸症候群の検査ができるようになりました。睡眠障害専門の医療機関だけでなく、多くのかかりつけ医の先生の所でも行なっています。もっと手軽にしたい人は、インターネットで申し込めば自宅へ機械を配送してくれて、検査後に送り返せば検査結果を知らせてくれるサービスもあります。

■自分でできる睡眠時無呼吸症候群の対策

太っているなら、まず体重を減らしましょう。体重が減るとノドの脂肪も減るので、気道が広がって無呼吸が減ります。お酒を飲んだ後に大きないびきをかく人は、お酒を控えましょう。二日酔いで顔がむくむのと同様に、アルコールでノドがむくんで気道が狭くなるからです。



いつも仰向きで眠る人は、横向きやうつ伏せで寝てみましょう。仰向けだと、眠っている間に舌がノドに落ち込みやすくなります。抱き枕やクッションなどで寝やすい姿勢を工夫し、横向きやうつ伏せで寝ると、舌が落ち込みにくくなり無呼吸状態を防げます。

 



市販の口閉じテープやマウスピースを使うのも、良い対処法です。テープは専用のものでなくても、かぶれにくい素材のものなら大丈夫です。1~2本のテープを縦や×印に張ってみましょう。マウスピースはインターネットなどでも買えます。口の中に入れると下顎が少し前に出て、気道を広げてくれます。朝起きたときに顎に違和感があることがありますが、多くの場合しばらくすると気にならなくなってきます。


高血圧症や狭心症、心筋梗塞、糖尿病などの原因になって、寿命を縮めてしまう睡眠時無呼吸症候群。
あやしいなと思ったら自分で調べたり、家族などに眠っている間の状態を尋ねてみたりしましょう。睡眠時無呼吸症候群の検査も、手軽に自宅でできるようになりました。もし、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いとわかったら、まずは自分でできることから対処していきましょう。それでも調子が良くならないときは、早めに睡眠障害専門の医療機関を受診しましょう。

雨晴クリニック 坪田 聡
睡眠専門医。医師、医学博士。
医師として快眠習慣の普及に努めるほか、行動計画と医学・生理学の両面から、睡眠の質の向上に役立つ情報を発信。睡眠に関する著書多数あり。
日本睡眠学会、スポーツ精神医学会、日本医師会所属。

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