老眼は年齢のせいじゃない!医師が教える目のスローエイジング習慣

老眼は年齢のせいじゃない!医師が教える目のスローエイジング習慣

最近、こんな経験はありませんか?

レストランでメニューの文字がかすんで読みにくかったり、スマホを見ていて気づいたら腕をぐっと伸ばしていたり。そして最後には、「まあ年だから仕方ないよね」とつぶやきながら老眼鏡を探してしまう――。

しかし、実はこの現象は、単に年を取ったから起こるものではありません。最新の医学では、老化を「避けられない運命」ではなく、「コントロールできる慢性的な病気」のひとつとして捉えています。そして、老眼こそがその「老化」という病気が最初に出すサインなのです。

本記事では、そんな老眼のサインを「年のせい」と諦めずに、目の若さを長く保つための具体的で科学的な方法をわかりやすく解説します。


目が出しているサイン

まずは、目がどんなサインを出しているのか、少し意識してみましょう。
最近、近くの文字が以前よりもぼやけて見えたり、ピントを合わせるのに時間がかかることはありませんか? スマホを見ていると、気づかないうちに腕をぐっと伸ばしていて、「腕が短くなったのかも」などと冗談を言ってしまうこともあるかもしれません。

本を読んだり書類仕事を長時間続けたあとに、目が重くなったり乾いた感じがして、頭痛までしてくることはありませんか? 以前は普通に本や書類が読めていた明るさの照明でも、文字がかすんで見えて、ついもっと明るい場所を探してしまうこともあるでしょう。

また、近くを見てから急に遠くを見ると、一瞬視界がぼやけてからゆっくりピントが合ってくる――そんなこともあるかもしれません。こうした症状は、単なる不便さではなく、目が「今、老化が進んでいますよ」「ちゃんとケアしてくださいね」と必死に出しているSOSサインなのです。


老眼の正体|固くなるレンズと弱る筋肉

老眼には、大きく分けて二つの原因があります。

ひとつは、水晶体のタンパク質が固まっていくこと。目の中でレンズのような役割をしている水晶体は、紫外線や活性酸素の影響を受けたり、AGEsと呼ばれる糖化による老廃物がたまっていくことで、少しずつ硬くなっていきます。硬くなった水晶体は形を変えにくくなるため、近くを見るときにピントをうまく合わせられなくなってしまうのです。

もうひとつの原因は、毛様体筋の衰えです。毛様体筋とは、水晶体の厚みを変えてピントを合わせるための筋肉のことです。この筋肉が年齢とともに弱くなっていくと、水晶体をうまく動かせなくなり、ピントを合わせるための調整力が低下します。

「硬くなったレンズ」と「弱くなった筋肉」。二つの要因が重なり合うことで、近くのものが見えにくくなったり、目が疲れやすくなったりする――それが老眼の正体です。

 

目の若さを保つためのスローエイジング習慣

日常生活の中で少し意識を変えるだけでも、目の老化は遅らせることができます。

ここでは、老眼を引き起こす原因を根本から改善し、目の若さを長く保つための具体的な方法を見ていきましょう。


外出時のサングラス|紫外線からのシールド

まず一番大切なのは紫外線対策です。紫外線は肌だけでなく、目の水晶体のタンパク質まで傷つけて、硬くしてしまいます。さらに、活性酸素を発生させることで、老化をどんどん進めてしまう原因にもなります。実際に、紫外線を多く浴びる職業の人は、白内障や老眼の進行が早いという報告もあります。

そのため、曇りの日でも外に出るときは、UVカットのサングラスをかけることが大切です。この習慣を続けるだけで、水晶体が硬くなるのを遅らせ、酸化によるダメージを減らせます。


糖化ストレスから守る|血糖コントロールがカギ

次に大切なのは、糖化ストレスから目を守ることです。糖化ストレスとは、体の中で余分な糖がタンパク質とくっついて、細胞を傷つけてしまう現象のことです。

血糖値が大きく上下すると、タンパク質と糖が結びついてAGEsがつくられ、水晶体が硬くなるスピードが速まります。さらに、毛様体筋の弾力も失われてしまいます。そのため、甘いものを控えるだけではなく、「血糖値の急上昇=血糖スパイク」を起こさない食習慣が大切といえます。

たとえば、ケトジェニック食や断食により、体の中で古くなった細胞や不要なたんぱく質を分解・再利用する「オートファジー」を促すライフスタイルは、血糖を安定させ、AGEsの発生を抑えてくれます。こうした血糖管理は、目の老化を防ぐだけでなく、全身のスローエイジングにもつながる、最も根本的な対策といえるでしょう。

 

抗酸化物質|目を守る秘密兵器

抗酸化物質も、目を守るために欠かせない成分です。目は活性酸素の影響を受けやすい、とてもデリケートな器官。そんな目を守ってくれる、頼もしい「最強コンビ」があります。まずひとつ目はアスタキサンチンです。体の外から摂取できる抗酸化成分で、網膜や毛様体筋までしっかり届き、目の疲れをやわらげて活性酸素のダメージから守る働きがあります。サーモンやエビ、カニなど、加熱すると殻が赤くなる魚介類に多く含まれています。

そしてもうひとつは、グルタチオンです。これは、もともと目の中に備わっている大切な防御のしくみで、水晶体の中に高い濃度で存在しています。グルタチオンが減ってしまうと、水晶体を酸化から守れなくなり、老眼の進行を早める原因になることがあります。

グルタチオンはアボカド、アスパラガス、ほうれん草などに多く含まれているため、日々の食事から意識的に取り入れることが大切です。


必要な栄養をピンポイント補給

必要な栄養をピンポイントで補うことも大切です。

まず注目したいのが、ルテインとゼアキサンチン。これらの成分は、ブルーライトから目を守るサングラスのような働きをしてくれます。ほうれん草やブロッコリー、卵黄などに多く含まれており、日常の食事から手軽に摂取できます。

また、血流を良くして炎症を抑える働きがあるオメガ3脂肪酸も、目を守るうえで欠かせない栄養素です。サバやイワシ、サンマなどの青魚に豊富に含まれています。さらに、ビタミンCも重要です。水晶体のコラーゲンを守るだけでなく、強力な抗酸化作用によって目の老化を防ぐ働きがあります。パプリカやキウイ、レモンなどに多く含まれているため、普段の食生活に積極的に取り入れましょう。

 

正しい目の筋トレ

目の筋肉を鍛えるトレーニングも効果的です。ここでいくつか簡単な方法を紹介します。

まずは、意識的なまばたきです。スマホやパソコンを見ているとき、まばたきの回数は普段の3分の1ほどに減ってしまいます。そこで、1時間に一度は5秒間ぎゅっと目を閉じて、ゆっくり開ける動作を5回繰り返しましょう。これだけで涙の膜がしっかり広がり、乾燥を防げます。

次に、時計運動です。顔を動かさずに、目だけを12時から6時、3時から9時、さらに斜めの方向へと動かします。時計回りに一周したら、反対回りにも一周。この動きによって固まっていた目の筋肉がほぐれ、可動域が広がります。

三つ目は、ピント移動の練習です。腕を伸ばして親指を10秒見つめたあと、窓の外など遠くの景色を10秒見る動作を繰り返してください。ピント調整をする毛様体筋を鍛えられます。

四つ目は、こめかみのマッサージです。指で軽く円を描くように30秒ほどマッサージしてみましょう。血流が良くなって緊張がほぐれ、疲れや頭痛の軽減にもつながります。

最後は、50-10ルール。50分作業をしたら、必ず10分は遠くを眺めて目を休めてください。シンプルな方法ですが、目の筋肉をリラックスさせるうえでとても効果的です。

 

間違った民間療法に注意

目のケアをするうえで大切なのは、やってはいけない方法を避けることです。

まず、太陽を直接見るのは絶対にNG。網膜が焼けてしまう危険があります。また、目を強く押すマッサージも避けましょう。眼圧が上がり、目の内部にダメージを与えるおそれがあります。

「目の運動だけで老眼が治る」などという話もありますが、科学的な根拠は得られていません。かつては「お茶を目に入れると老眼に効く」といった民間療法が広まっていたこともありますが、まったく根拠がないどころか、炎症を起こす危険があります。絶対にやめましょう。

さらに、緑内障や強度近視の既往がある方は特に注意が必要です。息を止めて行うような重い筋トレや、頭を下げる動きは眼圧を急激に上げてしまうため非常に危険です。できるだけ避けることをおすすめします。


まとめ

老眼の原因は、「固くなったレンズ」と「弱くなった筋肉」です。進行を遅らせるためには、目の筋肉を鍛える正しいトレーニングを行い、間違った民間療法を避ける知恵を持つことが大切です。

さらに、アスタキサンチンやグルタチオンなどの抗酸化物質、ルテインやオメガ3脂肪酸、ビタミンCといった栄養をしっかり摂ることも欠かせません。日頃の生活においては、紫外線とブルーライト対策、そして血糖コントロールが重要です。

そして何より大切なのは、目だけをケアしても意味がないということ。目の衰えは体全体の老化と深くつながっています。だからこそ、ケトジェニック食や筋トレ、Zone2有酸素運動などを取り入れて、全身の健康を保つことが、目の若さを守る最大のポイントといえます。

老眼は「年の証」ではありません。体のケアを怠った結果として現れる、老化という病気のサインなのです。目と体を一緒にケアして、若々しい視力を長くキープしていきましょう。

 


この先生が監修しました。

Dr. マイケル・リー

アメリカ・デューク大学2002年卒業。
大学卒業後、大学病院の医師として様々なライフスタイルの患者の治療に従事。
その後、治療現場の経験を生かし、アメリカの大手製薬メーカーJohnson & Johnsonで
医療製品開発の実務経験を積み、2012年にレイコップ株式会社を設立。

医師として、また開発者として、
「人々の暮らしをより健康で豊かに(Better Quality of Life)」という信念に基づき、
「暮らしの中の予防医療」を目指し、日々の生活習慣に溶け込むような製品の開発に取り組んでいる。

 

 


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