健康診断で身長を測ったとき、「あれ? 少し縮んでる?」と驚いたことはありませんか。
多くの人は「年を取れば背が縮むのは当然」と思いがちですが、実は背が縮むのは単なる加齢現象ではありません。骨が弱くなり、背骨に小さな骨折(微小骨折)が繰り返し起こることで、少しずつ身長が縮んでいくのです。
祖母や母親が骨粗しょう症で苦労している姿を見て、「自分も将来そうなるのでは」と不安に感じた経験がある人も多いでしょう。そうした不安から、骨を強くしようと牛乳を飲んだり、カルシウムのサプリメントを摂ったりする方も少なくありません。たしかにカルシウムは骨の材料として欠かせない栄養素ですが、カルシウムだけを摂っても骨は強くなりません。むしろ、骨に届かず血管に蓄積してしまい、心血管疾患のリスクを高める可能性もあります。
本記事では、多くの人が見落としがちな骨の健康の秘密について詳しく解説します。この先50年、大切な骨の健康を守るためにも、ぜひチェックしてみてください。
体が送るサイン|マグネシウム不足
マグネシウムは、骨の健康だけでなく、心や体のバランスを保つうえで欠かせない「マスターミネラル」です。
目の下がピクピクとけいれんする、夜中に足がつる、しっかり休んでも疲れが取れない、ちょっとしたことで不安やイライラを感じる、眠りが浅くて何度も目が覚める、原因不明の頭痛がある――。
こうした症状はすべて、マグネシウム不足のサインかもしれません。
マグネシウムの役割

マグネシウムは、350種類以上の働きを同時にこなす「マスターミネラル」です。私たちが食べたものをエネルギーに変えるときに欠かせない存在で、マグネシウムが不足すると、どれだけ栄養を摂ってもエネルギーが十分に作られず、疲れやすくなってしまいます。
また、マグネシウムは筋肉や神経の働きにも深く関わっています。カルシウムが筋肉を収縮させるのに対し、マグネシウムは筋肉を緩める役割を担っています。そのため、不足すると足がつりやすくなる、まぶたがけいれんする、神経が過敏になるなどの症状が現れ、不安感や不眠につながることもあります。
さらに、心臓や血管の健康維持にもマグネシウムは欠かせない存在です。マグネシウムには心臓のリズムを安定させ、血管をしなやかに広げて血圧を下げる働きがあることから、「天然の血圧薬」とも呼ばれています。
そして、最も根本的で重要な役割の一つがDNAの管理です。マグネシウムは、細胞の設計図であるDNAの合成や修復の過程にも欠かせない栄養素とされています。
このように、あらゆる生命活動の基盤を支えていることから、マグネシウムは「マスターミネラル」と呼ばれているのです。
骨の健康を守るドリームチーム

骨の仕組みは、建設現場に例えるととてもわかりやすくなります。
まず、丈夫な建物を建てるためには「レンガ」が必要です。これがカルシウムです。
次に、そのカルシウムを腸から吸収し、体の各所へ運ぶ「トラックの運転手」がビタミンDです。
しかし、このトラックは単体ではエンジンがかかりません。そこで登場するのが、現場監督であるマグネシウムです。マグネシウムがあって、初めてビタミンDが活性化され、本来の働きを発揮できるのです。
そして最後に必要なのが、現場の所長ともいえるビタミンK2です。ビタミンK2は、カルシウムが正しく骨に届けられるように「住所」を指定し、血管や心臓など間違った場所に沈着するのを防いでくれます。
このように、カルシウム・ビタミンD・マグネシウム・ビタミンK2の4つがチームとして連携して働くことで骨は強くなり、同時に血管も守られるのです。特に、カルシウムとマグネシウムのバランスは2対1が理想的とされています。
何をどう食べればいいのか?

体に必要な栄養素は、具体的にどう摂ればよいのでしょうか。
まず、カルシウムは1日あたり600~800mgを目安に摂取しましょう。豆腐半丁、小魚の煮干しひと握り、またはチーズ2枚ほどで補えます。
次に、マグネシウムは1日約300mgが必要です。ほうれん草1束、アーモンドひと握り、かぼちゃの種大さじ1杯ほどで、必要量をかなりカバーできます。
ビタミンDは1日800~2000IUが目安です。鮭の切り身1切れ、サバ半身、しいたけや舞茸1皿分などを食べると良いでしょう。また、日光を15分ほど浴びるだけでも体内でビタミンDが生成されるため、大きな助けになります。
ビタミンK2は1日あたり100マイクログラムが理想的です。納豆1パック、熟成チーズ、キムチなどに多く含まれています。
一方で、パンやラーメン、白米、スパゲッティなどの精製された炭水化物は、カルシウムやマグネシウムの吸収を妨げる原因になるため、できるだけ控えることをおすすめします。
運動が骨を守る

骨にとって、栄養と同じくらい大切なのが運動です。「軽く歩いたり、ヨガをしたりするだけでもいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実際に骨を強くし、背中が丸まるのを防ぐためには、もう少し本格的な運動が必要といえます。
まず取り入れたいのが、筋力トレーニングです。骨は筋肉に引っ張られる刺激を受けることで強くなります。中でも重要なのが、下半身と背中の筋肉です。
基本となるのはスクワット・プッシュアップ・ローイングの3つ。スクワットは太ももとお尻の筋肉を強化し、背骨を安定させます。プッシュアップは上半身と体幹を同時に鍛え、全身のバランスを整えます。そしてローイングは背中をまっすぐに保ち、猫背を改善して背骨の健康を保つのに役立ちます。
次に重要なのがZone2有酸素運動です。Zone2有酸素運動とは、「息が少し上がるけれど会話はできる程度」の強度で行う運動のことを指します。代表的なものには、ランニング、サイクリング、水泳などがあります。これらの運動を週3回以上取り入れるのが理想的とされています。
Zone2運動を続けることで、心肺機能が高まり、血流がスムーズになります。その結果、骨や筋肉に十分な酸素と栄養が行き渡り、全身のコンディションが整っていきます。
そのため、Zone2有酸素運動は「若さを保つ最強の武器」のひとつともいわれているのです。
まとめ
骨の健康は、カルシウムだけでは守れません。カルシウム、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンK2――この4つの栄養素がチームのように連携して働くことで、はじめて本当に健康な骨をつくことができます。
また、忘れてはいけないのは、背中が丸まり、身長が縮むことは単なる見た目の問題だけではないということです。姿勢の崩れは骨折の原因となり、長期の寝たきりにつながるだけでなく、認知症や死亡リスクを高める深刻な健康問題でもあります。ある研究では、50代以降に背中が曲がった人は、70代で認知症のリスクが約2倍に高まると報告されています。
しかし、今から正しく対策すれば、70代や80代になってもまっすぐ立って歩き、旅行を楽しみ、自分らしい生活を送ることができます。
本記事でご紹介した内容を参考に、骨の健康を意識した生活を心がけてみてください。
この先生が監修しました。

Dr. マイケル・リー
アメリカ・デューク大学2002年卒業。
大学卒業後、大学病院の医師として様々なライフスタイルの患者の治療に従事。
その後、治療現場の経験を生かし、アメリカの大手製薬メーカーJohnson & Johnsonで
医療製品開発の実務経験を積み、2012年にレイコップ株式会社を設立。
医師として、また開発者として、
「人々の暮らしをより健康で豊かに(Better Quality of Life)」という信念に基づき、
「暮らしの中の予防医療」を目指し、日々の生活習慣に溶け込むような製品の開発に取り組んでいる。






